造園業者とフラワーショップ店長が監修した、植物の特徴から詳しい育て方やお手入れ方法、収穫方法、植物の写真や誕生花、花言葉までさまざまな情報をご紹介します。
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イチジクとは
植物名 イチジク
学 名 Ficus carica
和 名 無花果 / 映日果 / 一熟
別 名 南蛮柿(ナンバンガキ)/ 蓬莱柿(ホウライシ)/ 唐柿(トウガキ)
英 名 Fig tree
科 名 クワ科
属 名 イチジク属
イチジクの特徴
イチジクの木は樹高3m〜6m程になるクワ科の落葉高木です。日本では5月〜7月頃が開花時期です。
イチジクの葉は互生する単葉で、3〜5裂する大型の掌状です。葉は肉質で、裏面には毛が密生します。葉や枝を傷つけると白い乳液が出て、ベトベトします。
イチジクの花は、葉腋に「花のう」と呼ばれる倒卵状球形になる果実のようなものが付き、その中に花を咲かせますので、花は見えません。花のうは淡い緑色で、花は雄花と雌花があり、同じ花嚢の中で雄花が上部に、雌花が下部に付きます。
イチジクの花のうは、果実(果のう)になります。径4cm〜8cm程の球形で、熟すと光沢のある褐色になります。イチジクの果実は、成熟する時期が年に2回あり、前年に着生した幼果が越冬して7月頃に熟したものを「夏果」と呼び、新梢に着生し、その年の10月頃に熟したものを「秋果」と呼びます。
イチジクの名前
イチジクの漢字である「無花果」は、外からは花が見えずに果実のように見えることから付けられたと言われています。イチジクという名前は、イチジクを意味するペルシャ語を漢名に音訳した「映日果(インジーカ)」に由来するという説や、一ヶ月で実が熟すことを示す「一熟」が転化したとする説もあります。
イチジクは江戸時代初期に日本に渡来して、当時の日本では「異国の果物」といった意味を含めて、「蓬莱柿(ほうらいし)」、「南蛮柿(なんばんがき)」、「唐柿(とうがき)」などと呼ばれていました。
イチジクの文化
イチジクは、原産地に近いメソポタミアでは6千年以上前から栽培されていたことが知られています。地中海でも古くから知られ、エジプト、ギリシアなどでは紀元前から栽培されていました。古代ローマでは最もありふれた果物のひとつであり、甘味源としても重要であったとされています。
最近の研究では、ヨルダン渓谷に位置する新石器時代の遺跡から、1万1千年以上前の炭化した実が出土し、イチジクが世界最古の栽培品種化された植物であった可能性が示唆されています。
日本へは江戸時代初期に渡来したとされていますが、日本に古く渡来した在来種とは別で、のちに果樹として洋種が栽培されています。当初は薬樹としてもたらされましたが、やがて果実を生食して甘味を楽しむようになり、挿し木で容易にふやせることもあって、果樹として家庭の庭などに広く植えられています。
「旧約聖書」の創世記に「エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイヴは、自分たちが裸であることに気づいて、イチジクの葉で作った腰ミノを身につけた」と記されていることから、果樹の中では最も歴史が古い樹木の一つとして知られています。ほかにも、聖書にはイチジクが多数登場します。
イチジクは、古代ギリシャではディオニュソスへの供物であり、ローマ建国神話のロムルスとレムスはイチジクの木陰で生まれたとされるなど、世界各地でイチジクは生命力や知識、自然の再生、豊かさなどの象徴とされています。
イチジクの利用
食用としてのイチジクは、果実の赤い部分は、花の部分によるものであり、果実がふっくらと丸みがあり、果皮にハリと弾力、光沢があるものが美味しく、商品価値が高い良品とされています。
イチジクの果実には果糖、ブドウ糖、たんぱく質、ビタミン類、カリウム、カルシウム、ペクチンなどが含まれていて、クエン酸が少量含まれますが、糖分の方が多いため甘味があります。食物繊維は、不溶性と水溶性の両方が豊富に含まれ、「不老不死の果実」と呼ばれる程、栄養が豊富で、美容やダイエットにも効果がある人気のフルーツです。
イチジクの果実は、生食とするほかに乾燥イチジクや、ジャムなどの加工食品としても流通しています。生果・乾燥品ともに、パン、ケーキ、ビスケットなどに練りこんだり、ジャムやコンポートにしたり、スープやソースの材料、ワインや酢の醸造用など、さまざまな形で食され、日本では甘露煮や天ぷらもあります。
イチジクの果実を乾燥したものを「無花果(ムカカ)」、葉を乾燥したものは「無花果葉(ムカカヨウ)」という生薬として利用されています。イチジクには整腸作用があり、便秘解消に役立つ働きがあります。また、消化促進作用があり、胃もたれや二日酔い防止にも効果があると言われています。
無花果葉には、たんぱく分解酵素、血圧降下作用があると言われています。また、風呂に入れて浴用に使われ、冷え性、肌荒れ、痔の出血止め、脱肛、腰痛、神経痛に効能があるとされています。
イチジクの果肉や枝葉から出る白い乳液は、民間薬として使われることもありますが、肌の敏感な人は、乳液が付くと、かぶれやかゆみが起こることがあるため注意が必要です。
イチジクの詳細情報
園芸分類 | 庭木・果樹 |
性質 | 落葉高木 |
開花時期 | 5月〜7月 |
花色 | 花のうの中に咲くため見えません |
栽培難易度 | |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 弱い |
イチジクの詳しい育て方
イチジクはアラビア南部や、南西アジアが原産と言われ、世界の乾燥温暖地で栽培されています。日本へは江戸時代初期に渡来して、庭木・果樹として植栽されています。
イチジクは愛知県、和歌山県、兵庫県、大阪府、福岡県などが主な産地として、各地でブランド品種も栽培されています。品種や産地にもよりますが、一般的な秋果は8月〜10月頃が旬の時期で、夏果は6月〜7月頃が旬の時期になります。
イチジクの生育環境
イチジクは温暖な気候を好む樹木で、栽培適地は「ミカン(蜜柑)」が栽培できる場所となります。基本的に関東以南が適していますが、品種によって耐寒性は大きく異なり、耐寒性の強いものは東北地方でも栽培可能です。
イチジクは日当たりの良い場所が好みで、日当たりが悪いと果実が熟さず、色が変わらないため、陰になっている葉は取り除いてあげましょう。
イチジクの植え付け
苗の植え付けは落葉期の12月〜翌3月頃が適期です。植え付ける際は、値切りを行い、根を整理して、根鉢は崩さないように浅植えに植え付けましょう。株が倒れそうであれば、支柱を立てて支えてあげましょう。
鉢植えの場合は、株よりも一回り大きな鉢を用意しましょう。鉢が大きい方が収穫量が多くなります。用土は水はけ、水もちのよい土を好むため、市販の花の培養土や、赤玉土に腐葉土を混ぜたものを使って植え付けて、たっぷりと水やりをしましょう。
イチジクの水やり
イチジクは水を好む植物で、葉が大きいため乾燥しやすく、乾燥すると株が弱ってしまい、落果してしまいます。水は必要としますが、土がずっと濡れている状態ですと根腐れを起こしてしまうので、水やりは季節や気温によって与えるタイミングを変えましょう。
庭植えの場合は、根付いてからは降雨でも問題ありませんが、夏場など乾燥が続くようであれば水やりをしましょう。また、乾燥対策として根本に腐葉土やワラを敷いてマルチングする方法もあります。
鉢植えの場合は、土が乾燥したら鉢底から水が染み出すくらいにたっぷりと水やりをしましょう。夏場など乾燥が続くようであれば、朝と夕方の1日2回、水やりをしましょう。
イチジクの肥料
肥料は与えなくても育ちますが、収穫するための果実をしっかりと育てる場合は肥料を与えましょう。元肥として、11月〜翌1月頃に腐葉土やたい肥を株元にすき込みましょう。
追肥として、6月〜9月頃に緩効性化成肥料を与えましょう。また、イチジクは酸性土壌より、中性・弱アルカリ性の土壌を好むため、苦土石灰を年1回、株元にすき込んで、アルカリ性土壌にしてあげましょう。
イチジクの害虫や病気
害虫はカミキリムシ、センチュウ、ネキリムシ、アリ、カイガラムシ、アブラムシなどが発生することがあります。いろいろな害虫が発生しますが、カミキリムシが一番の主敵で、カミキリムシさえ防除していれば、ほかの害虫は気にしなくても大丈夫です。
カミキリムシは幹に卵を産み、その幼虫が幹や枝を食い荒らして株を枯らせてしまいます。幹に穴が空いていて、オガクズが出ているようであればカミキリムシの可能性があります。その場合は、穴に針金を入れて刺殺すか薬剤を注入して防除しましょう。
病気はさび病があります。原因はカビの一種で、感染すると葉が変色し弱ってしまいます。見つけたら感染箇所を取り除き、殺菌剤を散布して被害を食い止めましょう。
イチジクの仕立て方
イチジクは放任すると樹高が高くなり、剪定や収穫が大変なので、はじめにメインとなる枝を決めて、それに合わせて毎年の剪定で樹形を作りましょう。剪定は落葉期の12月〜翌2月頃が適期です。代表的な仕立て方として「杯状仕立て」や、「一文字仕立て」があります。
「杯状仕立て」は、オーソドックスで仕立てやすい形です。枝や果実にまんべんなく日光を当てて、手の届く範囲で収穫できるように仕立てましょう。整え方は、植え付けた苗木を地面から50cm前後で切りましょう。2年目の冬に新梢を30cm程の位置で切り戻しましょう。3年目の冬に枝の付け根から3芽残して切り戻しましょう。
「一文字仕立て」は、主枝を2本、左右に開張させて固定し、主枝から上部に伸びる枝を等間隔になるように間引いて仕立てましょう。
イチジクの剪定
樹形ができあがった株は、毎年冬に剪定を行いましょう。混み合っている枝や徒長枝、枯れ枝、勢いのない枝、花芽が付いていない枝は根本から切り取りましょう。また、イチジクは「秋果専用種」「夏秋兼用種」で剪定方法が異なります。
「秋果専用種」の剪定は、冬の落葉時期の枝を見ると小さな芽が出ています。冬の間に枝の根元から3芽程を残して切り戻すことで、春以降に脇芽を出させ、収穫を増やすことができます。
「夏秋兼用種」の剪定は、冬の落葉時期の枝を見ると小さな芽が出ています。そのまま剪定せずに放任すると、夏果が収穫できます。冬の間に、この芽を枝の根元から3芽程を残して切り戻すことで、春以降に脇芽を出させ、秋果の収穫を増やすことができます。
イチジクの芽かき・摘芯
イチジクの芽かき・摘芯は5月以降に行いましょう。伸び続ける枝を40cm〜50cmで摘芯(切り戻し)をしましょう。このまま伸ばしていると枝葉ばかりが茂って、果実が付きません。一文字仕立ての場合は、枝を1.5m程で摘芯しましょう。摘芯した枝から新芽が出てきたら、その新芽は芽かきをしましょう。
イチジクの収穫
イチジクの秋果は8月〜10月頃が収穫時期で、夏果は6月〜7月頃が収穫時期になります。枝の下の方にできた果実から順番に熟していきます。よく熟れて、柔らかくなった果実から収穫しましょう。熟れたものは、付け根に近い細い部分を持って軽く持ち上げると簡単に採れます。
収穫時期を早める「オイリング」という方法があります。オイリングは、果実が3cm〜4cm程になり、少し赤く色づいてきた頃がタイミングです。果実の頂点の部分にストローやスポイドなどで、植物油やオリーブオイルなどを数滴垂らすと成熟が促進され、通常より1週間程度早く収穫できます。
イチジクの誕生木・誕生花・花言葉
イチジクは「8月7日」の誕生木です。
イチジクは「4月5日」の誕生花です。
イチジクの花言葉は「豊富」「裕福」「平安」「飽和」「多産」「実りある恋」「子宝に恵まれる」などがあります。
イチジクの花言葉は、1本の木にたくさんの果実を実らせる様子から付けられたと言われています。
イチジクのアーティフィシャルグリーン
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イチジクのまとめ
イチジクは果樹の中では最も歴史が古い樹木の一つとして知られ、「花のう」という見えない花が特徴で、美味しい果実が収穫できる樹木として人気があります。
慣れてしまえば育てるのはそんなに難しくないので、みなさんも是非イチジクを育ててみてはいかがでしょう!