造園業者とフラワーショップ店長が監修した、植物の特徴から詳しい育て方やお手入れ方法、収穫方法、植物の写真や誕生花、花言葉までさまざまな情報をご紹介します。
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ナツミカンとは
植物名 ナツミカン
学 名 Citrus natsudaidai
和 名 夏蜜柑
別 名 夏代々・夏橙(ナツダイダイ)/ 夏柑(ナツカン)
英 名 Japanese summer orange
科 名 ミカン科
属 名 ミカン属
ナツミカンの特徴
ナツミカンの木は樹高3m〜5m程になるミカン科の常緑小高木です。晩生柑橘類のひとつで、枝にはほとんどトゲはありません。
ナツミカンの花は、5月〜6月頃に開花します。花は葉腋に付き、芳香のある小さな白色の5花弁で、多数の雄しべが花糸の中部まで合生し雄ずい筒を作ります。
ナツミカンの葉は互生する単葉のようですが、これは複葉が退化したものです。葉は長さ10cm、幅5cm程の楕円形で、厚みがある革質の濃い緑色で、葉脈は隆起して目立ち、縁にはごく小さな鋸歯(きょし)があります。また、葉柄には幅の狭い翼があります。
ナツミカンの果実は扁球形で、表面は細かい凹凸でザラザラし、底面が深く窪みます。分厚い果皮に覆われていて、重さは400g~500g程になります。果実は花後の秋頃に実り、晩秋には黄色く色付きますが、酸味が強いので樹上で越冬させて、翌年の4月頃に収穫します。
実った果実が樹上で冬を越し、今年の果実と前年の果実が代々一緒に実るという近縁種「ダイダイ(橙)」と同じ特徴を持つことから「ナツダイダイ(夏代々)」の別名があります。
ナツミカンの利用
ナツミカンの完熟果は、そのまま生食で食べられたり、砂糖漬けやジュース、マーマレードなどに加工して食べられています。早落ちした未熟果は、クエン酸の製造原料として利用されています。
ナツミカンの栄養価としては主にビタミンC、ビタミンB群、クエン酸、酒石酸などの有機酸を含みます。これらの成分がとても強い酸味を示し、健胃作用や発汗解熱作用の働きがあります。
ナツミカンの果皮を陰干ししたものを「夏皮(なつかわ)」と称して、苦味性・芳香性がある健胃薬や香料の製造原料に使用します。また、この夏皮を布袋などに入れて浴湯料としてお風呂に入れると、血行改善、腰痛、神経痛、肩こり、リウマチに効果的で湯冷め防止になると言われています。
ナツミカンの歴史
江戸時代の中頃、青海島(山口県長門市仙崎)にある大日比海岸に漂着した果実の種子を西本チョウという女性が、庭先にまいて育てたのが始まりとされています。
この原木は樹齢240年以上ですが、現存(ただし原木部分は根のみで、上部は接ぎ木されたもの)して、「大日比ナツミカン原樹」として国の天然記念物に指定されています。
山口県萩市に行啓した、摂政宮裕仁親王(後の昭和天皇)はナツミカンのあまりの香りの良さに「この町には香水がまいてあるのか」と発言したとの記録があり、この香りは2001年、環境省による「かおり風景100選」に選出されています。
また、ナツミカンは山口県の県花に指定され、名産品として親しまれています。県内のガードレールの多くが黄色いのはナツミカンの色に由来します。
ナツミカンの枝変わり品種
大分県津久見市の果樹園で発見され、選抜・育成された、ナツミカンの枝変わり品種として「川野夏橙(カワノナツダイダイ)」という品種があります。アマナツミカン(甘夏蜜柑)やアマナツダイダイ(甘夏橙)と呼ばれ、主に「アマナツ(甘夏)」という名前で流通しています。
果実はナツミカンに比べると色付きが早く、酸が抜けるのも早いため、糖度が高く生食や加工品、ポン酢などに用いられ、サラダなどとしても食べられています。
ナツミカンの詳細情報
園芸分類 | 庭木・果樹 |
性質 | 常緑小高木 |
開花時期 | 5月〜6月 |
花色 | 白色 |
栽培難易度 | |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 弱い |
ナツミカンの詳しい育て方
ナツミカンは日本原産で、国内では関東南部以南の本州、四国、九州で栽培されています。主な産地は熊本県、鹿児島県、愛媛県が有名です。
晩秋位から黄色く色付き始めますが、その時点では酸味が強すぎて食べられないので、そのまま収穫せずに年を越し、翌年の4月〜5月頃が旬になります。
ナツミカンの苗植え
苗植えの適期は3月〜4月頃です。日当たりが良く、強い風や西日の当たらない場所が適しています。
用土は水はけのよい土が適していますので、庭植えの場合は掘り起こした土に腐葉土をたっぷり混ぜましょう。鉢植えの場合は市販の果樹用の培養土を使い、植え付けたらたっぷりと水やりをしましょう。また、根付くまでは支柱を添えて支えてあげましょう。
ナツミカンの水やり・肥料
庭植えの場合は根付いたら降雨だけで問題ありませんが、乾燥が続くようであれば水やりをしましょう。鉢植えの場合は、土が乾燥したら、たっぷりと水やりをしましょう。
肥料は3月、6月、11月の年3回、油かすなどの有機肥料を与えましょう。
ナツミカンの害虫や病気
害虫はアゲハチョウの幼虫が発生することがあります。葉を食害しますので、見つけたら取り除き、薬剤散布で防除しましょう。
病気はカビによるソウカ病、細菌によるカイヨウ病、黒点病などがあります。感染すると葉や果実に病斑ができて株が弱ってしまいます。発病した箇所を切り取り、薬剤散布で防除しましょう。
ナツミカンの受粉・摘果
ナツミカンは自家受粉するので、1本で収穫できます。また、「ハッサク(八朔)」などの受粉樹としても利用されています。
ナツミカンは7月〜8月頃に摘果を行いましょう。果実を一定数残して摘み取ることで、株に掛かる負担を減らし、実った果実は大きくなります。上向きのもの、重なり合うもの、小さいもの、傷んだものなどを摘み取りましょう。
目安としては、庭植えの場合、葉っぱ50〜60枚当たり1果を目安に残し、それ以外は摘み取りましょう。鉢植えの場合、8号鉢で2〜3果程を残して摘果しましょう。
ナツミカンの剪定
ナツミカンの剪定の適期は2月〜3月頃です。苗木を植えてから2〜3年かけて樹形を作ります。若い枝を3分の1程度切り詰めて枝数を増やしましょう。幹から伸びる枝は3〜5本程度が適当です。樹形を半円形に整える「半円形仕立て」か、ピラミッド型の「主幹形仕立て」に仕立てましょう。
4〜5年目以降の整った木の剪定は、混み合っている枝や枯れ枝を切り取り、風通しと日当たりを良くしましょう。昨年伸びた枝先には花芽が付いていますので、間違って切らないように注意しましょう。
ナツミカンの収穫
寒冷地では、低温にさらされると落果したり、実がスカスカになってしまうので、本格的な寒さが来る前に収穫し、常温で貯蔵して追熟させてから食用にしましょう。
暖地では、樹上で熟れて甘みが出るまで待ち、翌年の4月〜5月頃に収穫しましょう。6月を過ぎると果実が再び緑色に戻る「回青」という現象が起こり、実がスカスカになってしまうので、収穫忘れに注意しましょう。
ナツミカンの誕生木・花言葉
ナツミカンは「1月24日」の誕生木です。
ナツミカンの花言葉は「清純」「花嫁の歓び」などがあります。
ナツミカンのアーティフィシャルグリーン
アーティフィシャルグリーンとは、天然素材を使って、本物そっくりに作られた植木や花、観葉植物のことです。
本物の樹木とは違い、アーティフィシャルグリーンだけの魅力やメリットがたくさんあります。
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- 天然の樹木と違い、枯れる心配がなく水やりや剪定など、お手入れの手間がありません。
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ナツミカンのまとめ
ナツミカンは「かおり風景100選」に選ばれるなど、香水をふりまいたような香りが魅力で、収穫用としての楽しみもある樹木です。
慣れてしまえば育てるのはそんなに難しくないので、みなさんも是非ナツミカンを育ててみてはいかがでしょう!