造園業者とフラワーショップ店長が監修した、植物の特徴から詳しい育て方やお手入れ方法、収穫方法、植物の写真や誕生花、花言葉までさまざまな情報をご紹介します。
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チャノキとは
植物名 チャノキ
学 名 Camellia sinensis
和 名 茶の木
別 名 茶(チャ)
英 名 Tea plant
科 名 ツバキ科
属 名 ツバキ属
チャノキの特徴
チャノキは樹高1m〜4m程になるツバキ科の常緑低木です。日本では10月〜11月頃に花を咲かせます。
チャノキは一般的に茶畑などで葉を収穫するために1m前後に刈り込まれていますが、野生では5m〜10m程の樹高になるものもあります。若枝は緑色で細かい毛があります。
チャノキの葉は互生する単葉で、長さ5cm〜9cm程の楕円形です。葉は薄い革質で、光沢のある濃い緑色になります。葉の主脈と側脈は表側で著しく凹み、裏側に隆起します。裏側にははじめ長い伏した毛がありますが、のちに無毛となります。縁には鈍い鋸歯(きょし)があります。
チャノキの花は枝先の葉腋に下向きに1〜3輪付きます。花は径2cm〜3cm程の白色で、花弁は円形で先がくぼみ、5〜7枚あります。花柄は長さ1cm〜1.5cm程で下向きに鍵状に曲がります。花の中央には先端が三つに裂ける花柱があり、その周囲を多数の黄色い雄しべが囲みます。
チャノキの果実は蒴果で、径1cm程の球形になり、果皮は厚く、中に茶褐色の種子が入っています。果実は翌年の秋頃に熟し、自然と裂開します。
チャノキの歴史
チャノキは奈良時代〜平安時代に中国から薬用として渡来し、鎌倉時代の禅僧によって新芽を摘んで日本茶にする喫茶の文化が普及しました。日本では古くから日本茶として飲用され、本種は日本的な樹木ですが日本の固有種ではなく、チャノキという名前は、中国から日本に渡来した際の漢名「茶」を音読みしたものと言われています。中国では5世紀頃から喫茶の習慣があったとも言われています。
日本にもチャノキの野生樹があり、主に伊豆半島や九州地方などに自生しています。これは、茶園などの栽培地から広がって野生化したものと考えられ、こうしたチャノキを「山茶」と呼ぶこともあります。
チャノキの栽培産地
日本で現在栽培されている栽培品種は、1955年に選抜されて静岡県登録品種になった「やぶきた」系統が8割以上を占めていますが、ほかにも多くの品種があり、農林水産省に登録されていないものも合わせると100種類以上あると言われています。
日本では全国的にお茶の栽培が行われていますが、静岡県、三重県、京都府、宮崎県、鹿児島県などが産地として有名です。海外では烏龍茶で知られる中国の福建省や、世界三大紅茶のインド(ダージリン)、スリランカ(ウバ)、中国(キーマン)が有名です。
チャノキの天然記念物
佐賀県嬉野市嬉野町不動山地区にあるチャノキの大木は、樹齢300年以上、樹高4m以上と言われ、付近の名産品である嬉野茶の発祥に関わる由緒ある古木であり、嬉野茶のシンボルであり、「嬉野の大チャノキ」として国の天然記念物に指定されています。
チャノキの飲料
チャノキの主に新芽には、アルカロイド(カフェイン、テオフィリン、カテキンを含むティアタンニンなど)、アミノ酸(アルギニン、テアニンなど)等が豊富に含まれており、飲用として利用されています。その他有効成分として、精油(ヘキサノール、イソブチルアルデヒドなど)、ビタミンC、フラボノイド(クエルセチンなど)が含まれています。アミノ酸は茶のこくや旨味、精油は香り成分の元になっています。
チャノキの葉は、ふつう新葉の芽先2〜3枚程を摘み取って茶葉にし、緑茶や紅茶などの茶に加工して飲用されています。焙爐の助炭の上で乾燥したものが碾茶(てんちゃ)で、これを石の茶臼で挽いて粉末にしたものが抹茶、蒸して助炭上で手揉みして成分を出やすくしたものが玉露になります。
新葉を採集して玉露に準じて仕上げたのが煎茶、成葉を採集して煎茶に準じて仕上げたのが番茶となります。煎茶は、1煎目に滋養保健に役立つ成分が溶出し、2煎目から多く溶出する主成分はタンニン(チャタンニン)です。
チャノキは、葉や樹高が小さい緑茶用の「カメリア・シネンシス」と、葉や樹高が大きい紅茶用の「アッサム」に大別されますが、緑茶用のチャノキの葉でも製法を変えればウーロン茶や紅茶になります。茶葉を発酵させないものが緑茶で、軽く発酵させたものがウーロン茶、完全に発酵させたものが紅茶となります。
収穫時期による呼び名
茶葉の収穫は一年に2~4回行われ、収穫時期は地域によって異なりますが、お茶は収穫時期により呼び名が変わります。また、立春から数えて88日目のことを八十八夜といい、昔から「八十八夜に摘み採られるお茶は不老長寿の縁起物」として重宝され、その新茶を飲むと一年を災いなく過ごせると言われています。
一番茶(新茶):4月中旬~5月
一番茶は、その年の最初に生育した新芽を摘み採って作られたお茶のことで、新茶と呼ばれることもあります。一番茶は一年間で最も品質の良いお茶とされていて、苦みの少ない新鮮な香りと爽やかさのある味わいが特徴です。
二番茶:6月~7月
一番茶を摘んでから45日〜50日後に、2回目として摘み採られるものを二番茶と呼びます。二番茶は一番茶よりもカフェインやカテキンが多く含まれているため、苦みの強いお茶を味わうことができます。
三番茶(番茶):7月〜8月
夏の時期で高い気温の中、育成速度があがり、短期間で摘み取れる茶葉ですがカフェインの量は一番茶、二番茶と変わりません。渋みが増すため香ばしく焙じ茶にも利用されます。
四番茶・秋冬番茶:9月~10月
秋冬番茶は三番茶の芽を摘採せずに伸ばして、秋に一緒に摘採して作られるお茶で、一番茶や二番茶に比べると下級の部類になりますが、その分安価でスッキリとした爽やかな味が特徴です。
チャノキの利用
チャノキの若葉は「茶葉(ちゃよう)」、種子は「茶子(ちゃし)」と称して、薬用として利用されています。葉は頭痛、下痢、食べ過ぎ、のどの渇きに薬効があると言われ、種子は痰が出る咳に薬効があると言われています。
茶葉に含まれるアルカロイドは、発汗、興奮、利尿作用があり、チャタンニンは下痢止めの作用があるとされ、適量飲めば滋養保健に役立つと言われています。民間療法では、茶を風邪の予防にうがい薬として利用する方法が知られています。
また、緑茶やウーロン茶、紅茶などの茶は、熱を冷ます薬草でもあるため、冷え症や胃腸が冷えやすい人は、あまり多く服用しない方がよいと言われ、健康に良いと言われるお茶も飲み過ぎると、便秘や肩こりの原因になるとも言われています。
ほかにも、チャノキの果実や種子から食用油、化粧油の搾油が可能であり、「ツバキ(椿)」と同様にカメリア油を搾るのにも使われています。
チャノキの詳細情報
園芸分類 | 庭木 |
性質 | 常緑低木 |
開花時期 | 10月〜11月 |
花色 | 白色 |
栽培難易度 | |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 普通 |
チャノキの詳しい育て方
チャノキはインド、ベトナム、中国西南部の原産とされていますが、詳しくはわかっていません。茶畑での栽培のほか、野生化した樹木を含め熱帯から暖帯のアジアに広く分布しています。公園樹や生け垣に利用されることもあり、観賞用の園芸品種もあります。
チャノキの苗植え
苗植えの適期は3月〜4月頃です。日当りの良い場所を好みますが、半日陰でも育ちます。耐寒性はありますが、霜に当たると枯れてしまうため、冬は株元をマルチングしましょう。
チャノキは深く根を張る性質があるため、一度根付いた株を移植するのは難しい樹木です。植え付ける際は、根鉢の2〜3倍の植え穴を掘り、掘った土にたい肥を混ぜて、根鉢を浅めに植え付けたらたっぷりと水やりをしましょう。
チャノキの水やり・肥料
庭植えの場合は、根付いたら降雨だけで問題ありませんが、夏場など極端に乾燥するようなら水やりをしましょう。鉢植えの場合は、土が乾燥したら、たっぷりと水やりをしましょう。
肥料は寒肥として2月〜3月頃に、油かすと骨粉を株元の周辺に埋めてあげましょう。
チャノキの害虫や病気
害虫は、チャドクガが発生することがあります。チャドクガという蛾の幼虫が4月〜6月と8月〜9月頃に発生します。葉の裏や新芽の部分に群がって葉を食害します。
この幼虫や幼虫の死骸、幼虫の毛に少しでも触れると、痛痒い発疹が出たり、高熱が出てしまうので絶対に素手で触らないように注意しましょう。葉の裏に黄色い卵塊を見つけたら枝葉ごと切り取って処分し、薬剤散布で消毒、防除しましょう。
病気は、白紋羽病が発生することがあります。根の表面に白い菌糸が発生し、次第に生育が衰えて枯れていく病気です。株が弱っていると発生しやすく、発病した株は完治が難しいので処分しましょう。
チャノキの剪定
剪定は4月〜5月頃が適期です。チャノキは萌芽力が旺盛で、強い刈り込みにも耐えます。剪定は樹形を乱す徒長枝や枯れ枝、混み合っている枝を切り取り風通しを良くしてあげましょう。
茶畑では、扇型に刈り込まれることが多いですが、これだと秋に花が咲きづらくなってしまうため、庭木として育てる場合は、枝を間引いて樹形を整えましょう。生け垣や玉仕立てなどに利用する場合は、刈り込んで好みの樹形に仕立てましょう。
チャノキの収穫
チャノキは植え付け後、4〜5年程経つと茶摘みができます。一番茶(新茶)の収穫時期は4月〜5月頃です。その後、二番茶、三番茶と収穫できます。茶畑では機械摘みが一般的ですが、今でも高級品は手摘みで行われています。
4月頃になると前年の葉の付け根にある芽が萌芽し、新芽の葉が4〜5枚になった頃、摘み採りましょう。茶刈りばさみなどを使ったほうが効率よく収穫できますが、茶葉の品質が落ちてしまったり、チャノキの枝が年々小さくなってしまうこともあります。そのため、手間はかかりますが、手摘みのほうが品質の良い茶葉が収穫できます。
手摘みで収穫する場合は、爪を立てるとその部分が変色してしまうため、親指と人差し指で新芽の茎を挟み、新芽の付け根にある小さい葉を残し、折るようにして摘み採りましょう。この際、新芽の茎を優しくつまんで引っ張ると、自然にプチッと離れます。
茶葉の製茶
新茶の葉は、収穫するとすぐに発酵が始まってしまいます。発酵が進むと、ウーロン茶や紅茶になってしまうため、できるだけ早く加熱して発酵を止めましょう。日本の緑茶の多くは、蒸して加熱しています。家庭で新茶を作るときは、手軽にできる電子レンジ蒸しがオススメです。生の茶葉をサッと水で洗ったら、水気を切ってラップにつつみ、500~600Wの電子レンジで2分加熱しましょう。
次は、加熱した茶葉を揉みましょう。ホットプレートにクッキングシートを敷いて、一番低温にして茶葉を広げて乾かしながら、あまり乾かないうちに茶葉を揉みましょう。優しく揉んで、中の水分が出てきたらホットプレートで乾かし、揉みながら乾かすという工程を繰り返します。この時の温度は37℃が理想です。
揉みながら乾かし、茶葉が乾いて縮れてきたら、低温のホットプレートの上に広げて、焦げないように乾燥させましょう。乾燥の目安は茶葉がポキっと折れるくらいです。しっかりと乾燥したら茶葉の完成です。さっそく急須に入れて飲んでみましょう。
チャノキの誕生木・誕生花・花言葉
チャノキは「5月3日」の誕生木です。
チャノキは「5月27日」「11月29日」「12月3日」「12月8日」の誕生花です。
チャノキの花言葉は「純愛」「追憶」です。
チャノキのアーティフィシャルグリーン
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チャノキのまとめ
チャノキは古くからお茶の葉を収穫する樹木として栽培され、各地で喫茶が楽しまれています。現在も茶畑などで盛んに栽培されるほか、庭木として園芸品種もあります。
育てるのはそんなに難しくないので、みなさんも是非チャノキを育ててみてはいかがでしょう!